将軍が立ち去ると、兵士はミラーをいたぶりながら殺そうとした。が、ミラーに隙を突かれて反撃され銃を奪われて殺されてしまった。
そこにミラーの救出作戦を展開してきたMET小隊と特殊部隊が突入した。だが、乱戦のなかでアラウィが副官とともに隠れ家を脱出した。
ミラーは将軍の退路を守るイラク人兵士たちを倒しながら、将軍のあとを追って夜の闇のなかに飛び出した。
一方、軍事衛星や地上の部隊と連携しながら特殊部隊のヘリが将軍とミラーの動きを追跡していった。
将軍は練磨の戦術家だ。しかも市街の様子を知り抜いている。副官に「市場の区画に誘い出すからヘリを撃墜しろ」と命じた。作戦はまんまと当たり、バザール区画に逃げた将軍を追跡してきたヘリを副官が銃撃して撃墜した。
とはいえ、多勢に無勢、将軍は追い詰められていく。将軍を追跡するミラーのすぐ後を特殊部隊の小隊長が追いかけてきた。そして、小隊長は将軍に狙いを定めて銃撃しようとした。ミラーは制止しようとしてできた、隙を突かれて将軍が小隊長を撃ち倒してしまった。
その将軍に銃を捨てさせて、ミラーが話をするために近づこうとした。
そのとき、暗闇からファリドが現れて拳銃で将軍を撃ち殺してしまった。
ファリドは、イラン・イラク戦争に兵士として駆り出されて片脚を失った。しかも戦争後、軍と政府は、国家のために徴兵に応じて前線に派遣され重傷を負い脚を失ったファリドたち市民にはほとんど何の補償もしなかった。「愛国心」の煽動は結局、政権の言いなりになる「捨て駒を」徴募・利用するためのものでしかなかった。
そのうえ戦争後、軍はフセイン大統領やバース党とますます結託癒着し、利権を牛耳り腐敗していった。
しかも、政権に不満を持つ市民たちへの弾圧をますます強化していった。
その頂点に立っていたのがアル・ラウィだった。
ファリドは、だから軍に対して強い憤りを抱いていた。ことに将軍には殺意を抱くようになった。そして、ようやく殺害の機会を得たのだった。
そういうファリドの気持ちを知っているミラーは、将軍を殺したファリドを口では責め立てたものの、ただちに逃亡させた。フセイン政権や軍に抑圧され続けてきたファリドたち一般民衆の苦悩や苦痛も知っているからだ。
だが、これで、旧イラク軍組織を利用して秩序と思案を回復させることはできなくなった。というよりも、どのみちアメリカがイラクの国家レジームを闇雲に破壊してしまった以上、この国は惨々たる分裂や民族や宗派どうしの憎悪の連鎖反応に陥るしかなかった。ミラーはイラクの現状に暗澹たる思いを抱いていた。