バンクジョブ 目次
ダイアモンドの呪縛
見どころ
あらすじ
虚栄の輝きの裏に
成功を誇示する女性たち
女性蔑視の階級社会
ソ連との取引き交渉
世界市場支配の仕組み
ソ連の屈服
ホッブズ氏の暗示
階級(差別)社会の盲点
巨大コンツェルンの権力
復讐のための計画
最新監視装置の導入
驚愕の事件
ダイア独占と保険市場
犯人からの驚異の挑戦
謎解きと駆け引き
シンクレアとミルトン
権力を揮うミルトン
ミルトンの死
シンクレアの自殺
ローラの奮闘
ホッブズ氏の復讐計画
ダイアモンド強奪の手口
してやられた経営陣
その後……
■この映像物語の印象■
おススメのサイト
異端の挑戦
炎のランナー
諜報機関の物語
ボーン・アイデンティティ
コンドル

してやられた経営陣

  さて、約束の期限までに1億ポンドを指定口座に振り込ませたオリヴァー・アシュトンクロフトは、ボイル氏が依頼人から預かったという紙片を受け取った。そこには、ダイアモンドの在りかが記されているはずだ、と経営陣は考えていた。
  ところが、紙片は真っ白だった。何も書かれていなかった。
  茫然自失する経営陣。
  ローラがダイアモンドの在りかを知らせたのは、そんなときだった。
  経営陣はただちに運び出し・運び込みと点検の手配を取った。
  ローラはなかば陶然として地下排水抗に下りる階段に腰かけ、そんなあわただしい回収の様子を眺めていた。今や彼女は、会社の危難を救った功労者だった。

  そこにフィンチ氏がやって来て、ローラの目の前にしゃがんだ。
  「おめでよう、あなたはついに発見しましたね」と称賛した。
  ローラは「あなたは成功報酬をもらいそこねましたね。申し訳ありません。でも、私は……」と何かを打ち明けようとしかけた。
  しかし、フィンチ氏は、「言いたいことがあっても、今はやめておきなさい……。いや永遠に……」と口止めした。事件の調査という形で企業社会を突き放して外から冷静に観察する職にある彼は、意外に進歩的な人間で、ロンディ社内での不公平なローラの処遇を目にしていたのかもしれない。
  「あなたのような人を監獄に送りたくはありません。あなたと私は、同じタイプの生き方をとる人間です」
  と言い置いて、地上に帰っていった。「同じタイプの生き方」とは、したたかな野心を抱くがゆえに、企業社会の権力にひたすら従う生き方をしないということか。
  この辺りが、ブリテン人好みの恰好良さ stylishness というところだろうか。

  そして、物語の配役・登場人物の配置についても、コナン・ドイル以来のスタイル――かなり捻り込んだ形で――が見られる。ホームズに連れ添うミスタ・ワトスン役、デストレイド警部の役がホッブズ、ローラ、フィンチに割り振られるが、ただしローラやフィンチはいつでも常に「補佐役」あるいは「出し抜かれ役」のワトスン役とかデストレイド警部役を演じるだけでなく、自ら鋭い洞察力を発揮して切れ味鋭いホームズ役をも演じている。

  経営陣は、ダイアモンド全部が金庫室に戻されると、記者たちを金庫室の前に呼び集めた。そして、扉を開いた。
  「あなた方の言い分では、わが社のダイアモンド原石が全部盗まれたという情報があるとか。しかし、ご覧のとおり、この部屋にはたっぷりダイアモンドがあります」
  こういう演出で、ロンディ経営陣は、メディアを利用して会社の信用危機を一挙に払拭する手立てをとった。さすがにしたたかな経営陣だ。

前のページへ || 次のページへ |

総合サイトマップ

ジャンル
映像表現の方法
異端の挑戦
現代アメリカ社会
現代ヨーロッパ社会
ヨーロッパの歴史
アメリカの歴史
戦争史・軍事史
アジア/アフリカ
現代日本社会
日本の歴史と社会
ラテンアメリカ
地球環境と人類文明
芸術と社会
生物史・生命
人生についての省察
世界経済
SF・近未来世界