天国の門 目次
辺境での大虐殺
見どころ
あらすじ
エリートとしての旅立ち
熾烈な階級闘争
保安官、エイヴリル
WSGAの謀略
開拓農民たち
ネイトとジェイムズ
傭兵団の組織化
ジョンスン郡住民の分裂
ネイトの悲劇
へヴンズゲイトの戦闘
追い込まれた傭兵団
連邦騎兵隊の介入
不思議な終幕
■この物語の描き方■
■実際の事件 社会状況■
■利害紛争の拡大■
■階級戦争■
■紛争の実相■
■経済変動と気候変動■
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エリートとしての旅立ち・・・そして20年後


ワイオミング州の雄大な風景

  物語の発端は1870年、辺境ワイオミングからはるかに隔たった合衆国東部、マサチュウセッツ州ケンブリッジにあるハーヴァード大学のある学寮の卒業式である――この大学は多数の独立の学寮の集合体からなっている。
  若いジェイムズ・エイヴリルとウィリアム・アーヴィングを含めた学生たちが学寮の卒業式のあと、学寮の中庭に集い自ら卒業を祝い、酒に酔っぱらい、踊りまくっていた。

  金のかかるエリート大学の学生はほとんどがエスタブリッシュメント・エリートや成金の子息たちだ。裕福な家系で資産や名望に恵まれ、彼らの前途は明るく開けているかに見えた。
  ジェイムズもアーヴィングもともに、北西部に広大な放牧地(牧場)を所有する有力な地主の息子だった。勉学を修めたのちには、若い時期の「武者修行」としてどこか大きな都市で法律あるいは財務関係の仕事につき、やがて大規模な牧牛や食肉加工、輸出貿易などを多角的に経営する父親の仕事を継承するはずだった。

■20年後、ワイオミングで■
  物語の舞台は、そこから20年後のワイオミング州に移る。
  ジェイムズ・エイヴリルの顔には、世の中の多くの苦難を味わってきたような深いしわが刻まれていた。ジェイムズは鉄道の列車に乗って、南からジョンスン郡最寄りの駅まで帰ってきた。客車のなかに親しいジェイムズの顔を見つけた鉄道員(機関車の運転手と駅の事務を兼任)のカリーが近寄ってきた。
  駅に到着した列車からは、ヨーロッパ各地からの移住者=入植開拓者が多数、家族を引き連れて降りてきた。
  彼らは、長い船旅とアメリカ大陸内部の長い汽車の旅に疲れ果てた表情をしていた。だが、故郷の町や村では生活が困難になってしまい、貧しさから逃れるために、家や家財を売り払ったなけなしの金で合衆国政府が売り出した西部辺境州の土地保有資格を買い取り、新大陸にやって来たのだ。
  とにかく生き残るためには、それしかないのだ。

  ところで、このワイオミング州を含めた西部辺境州を地図で見てみると、だいたいの州が緯度や経度に平行な直線的な境界線で囲まれている。つまりは、合衆国政府は広大な原野をいくつもの州に分割するために単に機械的・幾何学的に境界を設定したのだ。つまり、「それ以前の歴史や来歴はない土地」だと割り切ったからだ。
  したがってまた、連邦内やヨーロッパから入植する人びとには、これまた所有者のいない原野を機械的・幾何学的に区分して、切り売りしたのだ。
  だが、それにしても、耕作や放牧などに有利な土地は、早くから入植した有力者=大地主たちに売ってしまっていたから、19世紀の末頃になって移住してくるヨーロッパ人たちに割り振られるのは、耕作や牧場経営に向かない荒涼たる原野だった。つまりは、国家が組織した「原野商法」がまかり通っていたのだ。⇒参考記事

  連邦政府は、とにかく国家形成のためには、西部辺境州の人口をできるだけ増やさなかればならないと割り切っていた。そして、ヨーロッパ各地から、政治的迫害や極度の貧困のため故郷では生き延びるのが困難になっていた人びと――政治難民や経済難民は15世紀から存在した――が、とにかく生き延びる機会を得るために、北アメリカに移民として大量に押しかけていた。
  とはいえ、およそ国家制度が存在する限り、どのような辺境にも支配階級がいて、既成の権力や既得権という壁が新規移民入植者たちの目の前に立ちはだかっていた。

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