住民集会の少し前、前哨戦ともいうべき虐殺が起きた。
ことの発端はこうだった。
WSGAに雇われた荒くれガンマンたちが、エラの娼婦館で待ち伏せていて、外出から戻ったエラを襲撃・暴行した。エラの馬車の御者を務めていた音楽家の知らせを受けて、エラのもとに急行したジェイムズが、エラを救出し、ガンマンたちを射殺した。そこにネイトとトラッパーも駆けつけた。
エラへの襲撃がWSGAの策謀だと知ったネイトは、憤然として、出撃態勢を整えている傭兵隊のキャンプにやって来た。そこでは、傭兵隊が、すでに「リスト」に名前を乗せられていた農民の1人を捕らえてリンチを加えていた。ネイトの怒りに油が注がれた。
ネイトはカントンら幹部がいるテントに入り込んで、傭兵隊やガンマンの横暴を非難した。そして、ネイトに手を出そうとしたWSGAの1人を射殺した。そのままネイトはカントンに訣別を宣言し、そのまま立ち去った。
ネイトの速撃ちに恐れをなしたカントンは、何の反撃もできずにネイトを見送ったが、屈辱ではらわたが煮えくりかえっていた。いつも群衆の前で威張り権威を振りまくことが好きなカントンは、1対1では何もできないのだ。
そこで、凶暴な怒りに駆られたカントンは、ネイトがコテイジに帰った頃合いを見計らって、傭兵隊を引き連れて襲撃を企てた。小屋の外にいたネイトの仲間、トラッパーを脅したうえで、攻撃を宣言した。そして、小屋に向かって四方八方から一斉に射撃を始めた。
なかにいたのは、ネイトと相棒のニック・レイだった。何しろ、50人以上の傭兵隊と、たった2人の銃撃戦だった。またたくまにコテイジは銃弾によって蜂の巣のようになった。一斉射撃が止んだとき、小屋の外に飛び出して反撃しようとしたトラッパーは銃撃され、重傷を負った。
ネイトが小屋のなかに連れ戻したが、まもなくトラッパーは息を引き取った。
傭兵隊の攻撃は波状的に小屋を襲った。ついに小屋に火が放たれた。煙と炎のなかで、ネイトは最後の反撃に出た。だが、小屋から飛び出したネイトは一斉射撃を受けて、銃弾の雨を浴びてしまった。
しばらくして、エラが駆けつけてきた。エラは、ネイトの亡骸に寄り添って泣き崩れた。
ひとしきり泣くと、エラは、傭兵隊が攻撃のために草原に集結していることを農民たちに知らせるために馬で町に走った。そして、集会場に駆け込んだ。
エラは概して農民の妻たちには評判が悪く、侮蔑や憎悪の対象となっていた。
彼女が娼婦館を経営し、自身も春をひさいでいるということが理由だった。それは宗教的ないし倫理的な理由というよりも、むしろ機会を見つけては彼女らの夫たちを誘惑し、なけなしの金を横取りしようとしていると考えられていたからだ。