天国の門 目次
辺境での大虐殺
見どころ
あらすじ
エリートとしての旅立ち
熾烈な階級闘争
保安官、エイヴリル
WSGAの謀略
開拓農民たち
ネイトとジェイムズ
傭兵団の組織化
ジョンスン郡住民の分裂
ネイトの悲劇
へヴンズゲイトの戦闘
追い込まれた傭兵団
連邦騎兵隊の介入
不思議な終幕
■この物語の描き方■
■実際の事件 社会状況■
■利害紛争の拡大■
■階級戦争■
■紛争の実相■
■経済変動と気候変動■
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■■利害紛争の拡大■■

  大地主たちは、個別企業としても、またWSGAをつうじて、はぐれ牛の捜索のために探偵―― ditective : 探偵会社。アメリカでは早くから田舎でも探偵業が成長した一因は、ここにある――や保安官経験者の捜査員を雇ったり、牛泥棒禁圧のために大勢のガンファイターを雇って零細農民を威嚇したりした。そして、牛泥棒を捕縛・銃撃した。
  探偵=捜索業者はガンファイタ――軍経験者を含む――たちはWSGAによって、傭兵隊=私兵団へと組織された。そして、州当局からの特許状を手に入れて、地方政府の警察・軍などの犯罪捜査組織・公安組織の末端として機能した。州政府や郡政庁はそれを黙認した。つまり辺境では「私立の警察組織」が動いいていたのだ。
  州を支配する権力者としての威信や驕りは、ときとして過剰防衛や行き過ぎ、そしてWSGAの権力に反発する住民への迫害、証拠なしの逮捕、銃殺などの暴力を招いた。

  WSGAが高度な政治的・経済的凝集を持つ団体に成長したことには、経済的・経営的な理由があった。
  広大・長距離の移動式牧牛のために、共同入会地や見開拓の原野、そしていくつかの地主所有地や零細農民などが入り混じったコースを、一定の秩序を保って移動し、そして、定められた地区に牛の群を集結させ、検査し、成獣を出荷するために西海岸の港湾都市まで送り届ける必要がある。
  そこで、畜産業者たちは結集して、移動でのセキュリティや牛群の集結まとめラウンドアップ作業、検査、競市場の開設、畜獣の重量・頭数ないし売渡金額に応じた課税・徴税、そして船便の調達や積み込みなどの業務を系統的に組織化したのだ。
  州政府にとっては、巨額の税収・手数料の収入機会だから、全面的にバックアップした。財政的にもWSGAと政府とが癒着するのは、必然的だった。WSGAは課税・徴税の担い手でもあった。

  ところで、西部から東部大西洋岸――ワシントンやニューヨークなど――への牛の輸送で最も安全で効率的、かつ安価なのが海運だった。
  さて、WSGAすなわち大地主階級の政治組織と開拓農民階級とが、激しい暴力的敵対を繰り広げるのは、1880年代から1900年代のことだ。というのは、この時期にワイオミングやモンタナなどの北部辺境州を厳しい冬の寒波が襲うようになったからだ。ことに1886−87年の冬は過酷で、零細農民による牛泥棒は頻発した。
  ついには、武装窃盗団が北西部諸州の各地を跳梁跋扈するようになった。
  WSGAが大がかりにガンファイターを徴募して傭兵隊を組織化するのは、この頃からだ。それにかこつけて、大地主たちは移牧や放牧のために所有地を拡大し、開拓地から農民を排除・駆逐しようとする運動を開始した。
  そのために、「牛泥棒」を理由として、これに無関係の開拓農民たちをも迫害し、追い立て始めた。

  名作西部劇「シェイン」の物語の背景も、大地主による土地独占の策謀のために、開拓農民が凶暴なガンマンたちによって迫害されるという状況が目立つようになった。もちろん当局は黙認だ。
  こうして、階級敵対は「階級間の戦争」にまで発展する。
  開拓農民たちも結集して武装するようになる。小競り合いや銃撃戦が頻発する。

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