シービスケット 目次
敗者たちの栄光
原題と原作について
見どころ
あらすじ
競走馬の世界
「金ぴかの時代」から大不況へ
チャールズ・ハウワード
トム・スミス
ジョン・ポラード
暗転 大不況の時代
金融恐慌
レッドの家族の離散
荒んだ生活
荒野に1人、トム・スミス
家庭の崩壊、チャールズ
シービスキット
トムとの出会い
気の荒い若馬
絶妙の組み合わせ
いざ、レイスへ
恐るべき競争心
経済危機の状況について
レイスの戦い方
シービスキットの実際の戦績
狂言回し、マクゴーリン
王者への挑戦
挑発と冷笑
ポラードの右目
ダヴィデ対ゴリアテ
秘  策
レッド・ポラードの悲運
シービスキットの傷害
リハビリ
復   活
名脇役たち
おススメのサイト
異端の挑戦
炎のランナー
医療サスペンス
コーマ
評  決

秘  策

  シービスキットにはようやく挑戦する機会が与えられたが、その相手の偉大さにあらためて息をのむことになった。果たして、ウォアアドミラルに勝つ術があるのだろうか。
  トムは、勝つには徹頭徹尾先手を取るしかないと判断した。だが、ほかの3人は疑問をぶつけた。
「どうやって?」
「これから訓練するさ。2週間ある」といって、出かけた先は、ボルティモアの消防署。
  そこで警報用ベルを譲り受けた。出走の合図に使うベルと同じものらしい。
  あの馬に勝つには、スタートから飛び出して終始リードを保つ、そして先行すれば内側のコース取りで走る距離を節約して消耗を抑える。だが、先行されたら抜き返すのは無理だろう、というのがトムの読みだった。
  で、そのためには、スタートでの反応を素速くして、馬対の軽さを利用してダッシュをかける。だから、ベルへの反応を速くする訓練が必要だった。
  だが、この練習をマスメディアや相手側に知られてはならない。というわけで、練習は真夜中におこなうことになった。


  はじめはベルの音と同時に鞭を軽く当ててスタートする練習。ベルの音に慣れるにつれて、鞭の当て方を弱くし、最終的には鞭を空中で振るだけにする。馬は素晴らしい聴覚をもっているので、鞭の音だけで騎手の意思を読み取ることができるからだ。そして、暗闇での衝撃は馬を怯えさせるだけだろうからだ。それにしても、真っ暗闇のなかで馬は戦速力を出せるのか?
  だが、コースは真っ暗闇のなか。ポラードは恐れたが、シービスキットは馬。暗闇でも目が利き、正確に走る。ポラードは、あらためて馬の素晴らしさと能力に感動した。

  真夜中にトレイニングするので、シービスキットは昼間は馬房で眠り、休息を取っていた。つまり、マスメディアの前では、シービスキットは練習をしていないように見えた。そこで、詰めかけた記者たちはトムに質問した。
「いったい、いつ練習するのかね」
「もちろん、馬が目覚めてからさ」
  記者たちはシュラッグし、呆れた。いつまで待っても、練習は始まらないから。
  シービスキットは、このところ昼間は相棒の年老いた葦毛の巨体の馬の横で寝ていた。

前のページへ | 次のページへ |

総合サイトマップ

ジャンル
映像表現の方法
異端の挑戦
現代アメリカ社会
現代ヨーロッパ社会
ヨーロッパの歴史
アメリカの歴史
戦争史・軍事史
アジア/アフリカ
現代日本社会
日本の歴史と社会
ラテンアメリカ
地球環境と人類文明
芸術と社会
生物史・生命
人生についての省察
世界経済
SF・近未来世界