ヨーロッパの解放 目次
リアリズムとプロパガンダ
映画の見どころと分析視角
ソ連型リアリズム
リアリズムとは何か
東部戦線の特異性について
西部戦線から東部戦線へ
ナチズムを甘く見たソ連
ドイツ軍の破竹の侵攻
スターリングラードの死闘
クルスクの戦闘
クルスク戦の実相 @
クルスク戦の実相 A
ドゥニエプル渡河作戦
驚くべき奇策
河畔の激戦
ドゥニエプル渡河の戦略的な意味
パグラチオン作戦
罠にはまったヒトラー
戦車の歴史の1断面
T-34の優秀性
過剰適応の失敗 T-54/55、T-62
乗員の生存率を最優先とする設計思想
T-34のデビュー
T-10/JS型戦車について
「ヨーロッパの解放」以後の戦争映画

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リアリズムとプロパガンダ

  「ヨーロッパの解放」という作品群は、第2次世界戦争の東部戦線の推移を描いた戦史シリーズだ。最前線の戦闘シーンやソ連軍によるナチスからの「ヨーロッパの解放」闘争の進展を、実物そっくりの兵器(戦車、大砲など)や多数の兵員を登場させて描いた超巨大スケイルの戦争映画だ。
  そこには、当時のソ連の「社会主義的リアリズム」という思想や方法論が駆使されている。登場する戦車などの兵器の実物感や迫力は圧倒的だ。しかし、作品としての取り扱いは、きわめて難しい作品だ(シリーズ 1970〜71年)。

映画の見どころと分析視角

  「ヨーロッパの解放」シリーズは、扱い方が難しい作品群だ。
  これまで戦史映画をいくつも話題にしてきた。私の視点としては、史実と映画作品の物語性・映像手法を比較関連させることで、限られた範囲だが、近代史のなかでのそれらの戦争(戦闘)の意味や位置づけを描き出してきたつもりだ。
  その意味では、映画作品を通して、実際の歴史としての戦争・戦闘の実像=全体像を、読み物風に描き出そうと試みてきた。
  ところが、この「ヨーロッパの解放」シリーズは、ソ連国家のイデオロギーの表明――つまえいプロパガンダ性――と独特の鋭いリアリズムを合わせもつがゆえに、きわめて扱いが難しい。

  東部戦線の真実を独特のソヴィエト型「社会主義的リアリズム」の立場から枠づけてはいるものの、とはいえ他方で、兵器オタクが垂涎しそうなほどにリアルな戦車、大砲、作戦の実態などを描き出しながら、戦場の地理的条件や気候風土、前線の兵士たちの過酷な運命を克明に描き切り、なおかつ戦闘場面や戦場の遥か背後で動く国家間政治(パウワーポリティクス)の文脈をも表現している。
  前線の兵士たちの苦悩と、スターリンをはじめとするソ連指導部の戦争政策を一見称揚しているように見えるが、彼らの軍政上の選択がいかに冷酷なものだったかも描いているように見える。

  しかし、そこに物語性は乏しい。散漫なほどに茫洋として過酷な世界が広がるだけである。もちろん、戦略はスローガンとしては明確に描かれているが、映像のシークェンスで眺めると、実は索莫としてとらえどころがないのだ。
  私としては、いろいろ悩んだあげく、これまでと同様に、映画が描こうとした場面の背後にある戦史の全体像、個々の戦闘の意味・位置づけを分析する手法で扱うことにした――映画制作の具体的な手法とイデオロギー的背景にも触れながら。

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