ミュンヘン 目次
暴力と憎悪の連鎖
原題と原作について
見どころ
あらすじ
ミュンヘン・オリンピックのテロ事件
テロリストたちの要求、交渉の経過
大 惨 劇
されどオリンピックは続く
偶然の連鎖としての状況
イスラエル国家の意思表示としての報復
暴力の応酬
標的の11人
超法規的=非合法の作戦
作戦ティームのメンバー
容赦ない暗殺
容赦ない暗殺 続き
闇の情報屋稼業
大きすぎた破壊力
爆弾製造役の能力
方針の対立
ベイルートでの襲撃
ルイのファミリー
危ない回り道
変貌する作戦
CIAコネクション
CIAの妨害
策謀の交差
復讐のための復讐
パンドーラの箱
分 岐 点
運河での殺戮
崩壊し始めたティーム
隠れ家襲撃の失敗
PTSD
国家論の問題として
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史上最大の作戦
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コーマ
評  決

爆弾製造役の能力

  ロバートがつくる爆弾はあまりに強力すぎた。アヴナーも危うく吹き飛ぶところだった。ティームの4人は、ロバートの爆発物製造技術に大きな不審を抱いた。で、ロバートを問い詰めた。
  ロバートによると、チェコスロヴァキア製のプラスティック爆薬は、内容量や性能に関するラヴェル表示が間違っていたという。
  それでも、メンバーの疑いは晴れなかった。
  次の次の作戦でもやはり、爆薬にトラブルが発生した。そのとき、さらに問い詰めると、ロバートはバ揮発物の解体処理が専門で、製造については1回講義を受けただけの素人だったと判明した。
  モサドの内部のエイジェントの能力や技術に関する評価や情報のレヴェルは、当時はこの程度だった。というのも、何しろ急ごしらえの報復作戦ティームだったし、これまでイスラエル側は、暗殺や破壊のために爆発物をつくることはなかったのだから。爆発物の解体・無害化のための訓練を積んだ専門家はいても、製造技術の訓練はほぼ皆無だったのだ。

  チェコ製のゼムテクス爆薬は用途や使用環境に応じて、さまざまなタイプがある。爆薬成分の調配合比率や爆発強度は、タイプごとに相当違っているという。たとえば、普通の地上=通常大気中で爆発させる場合と、水中爆破、あるいは地中爆破、そしてコンクリート構築物の破壊では、爆薬の成分や威力は大きく異なる。
  爆薬・炸薬の重量表示が同じでも、破壊力や爆発態様はかなり違う。
  おそらく、ロバートは水中で大きな爆発範囲となる爆薬とか構築物破壊用の爆薬を使用したのだろう。重量表示ではなく、内容成分表示の違いを読み取ることができなかったのだろう。

方針の対立

  いろいろなアクシデントはあったが、これまでのところ、アヴナーのティームの報復作戦はかなり順調に進んできた。
  とはいえ、イスラエル政府の連絡監督官エフライムから見ると、金がかかりすぎるものだった。とりわけて、標的に関する情報提供者への報酬が高すぎる、と判断していた。
  そこで、エフライムはアヴナーに情報提供者の正体が誰かを教えるように迫った。それが明らかにならないと、もう政府は資金を提供しないと迫った。けれども、アヴナーはルイへの信義を守り抜き、エフライムには何の情報も与えなかった。
  しかし、エフライムとアヴナーのティームは、より根本的な問題で衝突していた。
アヴナーたちは、ルイから、このあと標的になるはずの3人が現在(そして当面)レバノンのベイルートに滞在しているという情報を得ていた。そのため、報復作戦を遂行するためには、ティームはベイルートにいかなけれなばらない。しかし、エフライムは政府の方針としてそれを許すわけにはいかなかった。
  アヴナーたちとエフライムの対立は深刻だった。

  結局、アヴナーたちがエフライムを押し切った。ただし、イスラエル政府は、中東地域での「報復作戦ティーム」の活動という事実を完全な極秘にしておくため、この襲撃は公式上あくまで「イスラエル国防軍」の作戦という体裁を貫くという方針を貫いた。
  つまり、報復作戦ティームは、情報提供者=協力者という形でイスラエル正規軍特殊部隊に随行するということにした。そして、アヴナーはベイルートには赴かないという条件をつけた。

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