薔薇の名前 目次
聖歌が響く僧院で
原題について
見どころ
あらすじ
ヨーロッパの歴史映画として
予備知識
主なキャスティング
連続怪死事件とその真相
  幻の名著
  アデルモの死
  ヴェナンツォの死
  セヴェリーヌスの死
  マラキーアの死
  書庫での対決…
歴史の皮肉 ルネサンスへの動き
物語の発端
イタリアと教会をめぐる地政学
教会批判の噴出と異端派
領主権力としての修道院
アヴィニョン「幽閉」
教皇庁移転の意味
中世晩期の「バブル」
アヴィニョンの新教皇選出
教皇 vs 皇帝…ローマ教会の分裂
ウィリアム修道僧の立場
謎解きの舞台装置
  登場人物と舞台設定
  「名探偵」登場!
僧たちの連続怪死の背景
死への誘い ホルヘの策謀
サルヴァトーレとの出会い
レミージョ
アドゥソと村娘
修道院での神学論争
融通無碍なる教会運営
異端審問法廷
最後の対決
  地獄の業火…農民反乱
原作と映画との違い
原作者エーコの意図

レミージョ

  そんなときに、師弟はレミージョに出会った。レミージョはもっとしたたかだったが、だいたいはサルヴァトーレと似た経歴だった。
  おりしも、教皇はその地方の有力な君侯たちと同盟を計らって、反乱運動と化したドルチーノ派を捕縛殲滅するために、各地を流浪しながら反乱や掠奪を企てるドルチーノ派群衆の野営地を包囲した。サルヴァトーレは、命からがら逃げ出した。だが、立ち回りの巧みなレミージョは、密告者・内通者として、教皇派・諸侯の同盟軍の案内役となった。
  その後、レミージョは運よくこの修道院の厨房係りとして雇われた。そこにたまたま放浪して通りかかったサルヴァトーレを、厨房の雑用係として雇うように院長に頼み込んだのだった。だから、サルヴァトーレはレミージョに深く恩義を感じていた。
  その恩義を巧みに利用して、レミージョはサルヴァトーレを道具のようにこき使い操っていた。

  そのうえ、僧院の食糧を分け与えることと引き換えに、若い村娘の肉体を手に入れていたのだが、その窓口役・取り持ち役としてサルヴァトーレを利用していたのだ。立ち回りが狡猾で自分の欲望には実に忠実な男だった…とはいえ、下層民出身のレミージョも同類としての小作人や農民には同情的で、ときには何の代償もなしに村娘に食糧を渡していた。「もちつ、もたれつ」の関係だ。

アドゥソと村娘 名も知らぬ薔薇

  翌日、アドゥソはウィリアムの指示で、僧院の聖堂やら僧坊やら、あちこちの施設を調べ回った。納屋とか厨房の食糧倉庫がある棟で、こっそりレミージョとサルヴァトーレの動きを探っているとき、レミージョが突然近づいてきた。アドゥソは急いで隠れた。
  レミージョは村娘に逃げられたので、彼女を探しにきたのだった。だが、アドゥソは隠密の捜査を知られてはならないないので、倉庫の暗闇に息を止めて潜んでいた。
  ところが、アドゥソの隠れ場所のすぐ近くに村娘が隠れていた。驚いたアドゥソだったが、声を立てずに息を潜めていた。レミージョは倉庫のなかを探し回ったが、誰も見つけられずに出ていった。

  薄暗闇だったが、彼女は美しい娘だった。その娘は、美男のアドゥソを見て、抱きついてきた。欲望のままに奔放に生きる娘で「たしなみ」も羞恥もあったものではない。これまた驚いたアドゥソだったが、なにしろ若者なので、すぐに欲望を抑えきれなくなった。というわけで、アドゥソはその娘と性交渉におよんでしまった。
  真摯で禁欲的な修道僧の身であってみれば、アドゥソの生涯1人だけの女性で、1度だけの体験だった。ただ1回の美しい薔薇との契りの記憶となった。

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