薔薇の名前 目次
聖歌が響く僧院で
原題について
見どころ
あらすじ
ヨーロッパの歴史映画として
予備知識
主なキャスティング
連続怪死事件とその真相
  幻の名著
  アデルモの死
  ヴェナンツォの死
  セヴェリーヌスの死
  マラキーアの死
  書庫での対決…
歴史の皮肉 ルネサンスへの動き
物語の発端
イタリアと教会をめぐる地政学
教会批判の噴出と異端派
領主権力としての修道院
アヴィニョン「幽閉」
教皇庁移転の意味
中世晩期の「バブル」
アヴィニョンの新教皇選出
教皇 vs 皇帝…ローマ教会の分裂
ウィリアム修道僧の立場
謎解きの舞台装置
  登場人物と舞台設定
  「名探偵」登場!
僧たちの連続怪死の背景
死への誘い ホルヘの策謀
サルヴァトーレとの出会い
レミージョ
アドゥソと村娘
修道院での神学論争
融通無碍なる教会運営
異端審問法廷
最後の対決
  地獄の業火…農民反乱
原作と映画との違い
原作者エーコの意図

◆書庫での対決 そして地獄の業火◆

  その朝、ホルヘは朝課の礼拝には参加しなかった。
  マラキーアが文書館書庫の奥深くに入り「詩論」を手にしたとき、ウィリアムとアドゥソが秘密の通路の1つから書庫に進入してきた。
  2人はすでに1度書庫に忍び込んだが、そのときは他者を寄せ付けないように仕組まれた迷路に迷ってしまった。だが、そのときの経験を生かして、今度は書庫の大まかな構造を理解していた。秘密の部屋の扉を開ける暗号を解明したのだ。

  ウィリアムとアドゥソは、異端審問で有罪を宣告され火刑に処されようとしているサルヴァトーレとレミージョ、そして美しい村娘の冤罪を晴らすために、それゆえまた、ホルヘの狂信的な策謀を暴くために、ここに忍び込んだのだ。それというのも、ここの蔵書の秘密が、5人もの修道僧の連続怪死を呼び起こした原因だということを知ったからだ。


  ところが、2人が秘密の部屋に入ると、マラキーアは手にした『詩論』のペイジをめくった指を嘗めながら、蔵書を葬り去ろうとしていた。砒素の毒が身体中に回るのを感じながら、マラキーアはカドゥーソのランプを奪い、その炎を書庫に燃え移らせようとした。ウィリアムは食い止めようとしたが、間に合わなかった。
  広がる炎を前に、ウィリアムはカドゥーソを先に文書館から逃がそうとした。そして、彼自身は貴重な書籍を救おうと懸命の努力をするのだった。
  カドゥーソはウィリアムに追い立てられるように、出口への通路に急いで、どうにか館から外に出ることができた。
  振り返ると、文書館の建物の窓という窓から炎と紅蓮の煙が噴き出していた。ヨーロッパでも随一の蔵書を誇る文書館が消滅しようとしていた。そして、地下室の宝物蔵も。

  さて、修道院の前庭に設えられた火刑用の十字架はすでに炎に包まれていた。  アドゥソは文書館の炎と火刑の炎を見て立ちすくんだ。だが、しばらくして、別の出口からウィリアムが脱出してきた。彼は両腕と何冊もの書籍を抱え、着ている衣にくるんで運び出した書籍もあった。この学究は、自分の命よりも蔵書の救出を優先したのか。

  以上は、この作品を平板に観たときの連続怪死事件の「真相」にすぎないことを断っておく。映画が描き出すものは、それだけではない。

前のページへ | 次のページへ |

総合サイトマップ

ジャンル
映像表現の方法
異端の挑戦
現代アメリカ社会
現代ヨーロッパ社会
ヨーロッパの歴史
アメリカの歴史
戦争史・軍事史
アジア/アフリカ
現代日本社会
日本の歴史と社会
ラテンアメリカ
地球環境と人類文明
芸術と社会
生物史・生命
人生についての省察
世界経済
SF・近未来世界
おススメのサイト
異端の挑戦
炎のランナー
医療サスペンス
コーマ
評  決