薔薇の名前 目次
聖歌が響く僧院で
原題について
見どころ
あらすじ
ヨーロッパの歴史映画として
予備知識
主なキャスティング
連続怪死事件とその真相
  幻の名著
  アデルモの死
  ヴェナンツォの死
  セヴェリーヌスの死
  マラキーアの死
  書庫での対決…
歴史の皮肉 ルネサンスへの動き
物語の発端
イタリアと教会をめぐる地政学
教会批判の噴出と異端派
領主権力としての修道院
アヴィニョン「幽閉」
教皇庁移転の意味
中世晩期の「バブル」
アヴィニョンの新教皇選出
教皇 vs 皇帝…ローマ教会の分裂
ウィリアム修道僧の立場
謎解きの舞台装置
  登場人物と舞台設定
  「名探偵」登場!
僧たちの連続怪死の背景
死への誘い ホルヘの策謀
サルヴァトーレとの出会い
レミージョ
アドゥソと村娘
修道院での神学論争
融通無碍なる教会運営
異端審問法廷
最後の対決
  地獄の業火…農民反乱
原作と映画との違い
原作者エーコの意図

最後の対決

  翌朝、聖堂に会した修道僧による朝課の礼拝が始まった。ところが突然、マラキーアが悶絶して倒れた。近くの僧が駆け寄って抱き起こしたときには、すでに事切れていた。彼の指先と舌は黒変していた。ウイリアムの指摘したとおりだった。
  だが、3人の火刑の準備は着々と進められていた。
  ウイリアムとアドゥソが文書館の書庫に入り込んで、ホルヘとの最終的対決に挑むことになったしだいは、すでに「真相」の項で述べたとおりだ。そして、文書館の巨大な建物と塔が炎に包まれる。アドゥソとウイリアムは、どうにか脱出した。

地獄の業火、そして農民たちの反乱

  さて、ウィリアムたちが書庫のなかで対決してあいだに、火刑は始まっていた。
  3人は火刑用の十字架に縛りつけられ、刑架の根元には薪が積み上げられ、最初にサルヴァトーレ、続いてレミージョの足元の薪に火がつけられた。そして、村娘の薪に火がつけられようとしたとき、緊迫した不穏な気配が立ち込めた。
  刑場の周りに小作農や村人たちが、武器になりそうな農具を携えて集まり、ベルナール一行に迫ろうとしていた。ベルナールは反乱蜂起の気配に気づいて、兵隊とともに撤収(逃亡)を始めた。
  その頃、勢いを増した炎は文書館から聖堂た僧坊などに燃え広がっていた。僧たちによる消火や貴重な文物や宝物を救い出そうとする努力は、混乱のなかで、まったく意味をなさなかった。僧院全体が火災に飲み込まれようとしていた。


  ところで、ベルナール一行の逃亡に気づいたアドゥソが、兵隊に護衛された馬車を追いかけたが無駄だった。落胆したアドゥソが振り返ると、2つの十字架はすっかり焼け焦げていて、人の姿は消滅していた。
  さて、僧院の門から運よく逃げ出したベルナールではあったが、彼の乗った馬車は屈曲や起伏の多い山道で横倒しになり、崖の縁にかろうじてとどまった。ところが、憤った村人たちは、その馬車をベルナールもろともがけ下に突き落としてしまった。
  ベルナールは崖を転がって、無数の鋭い針金が突き出た農具(脱穀機の回転胴)の上に落下した。身体中を針金が突き抜けて即死した。

  僧院の火災は一晩中続いた。由緒と権威がある修道院は残骸を残して焼失してしまった。
  明け方、ウイリアムとアドゥソは2頭のロバを見つけて跨り、山道を麓に向かった。朝霧に包まれて薄暗い山道でアドゥソは、道端に佇む人影を見つけた。近づくと、あの村娘だった。村人によって火刑の十字架から救出されて無事だったのだ。彼は娘に近づき頬をなでた。娘は愛惜いとおしそうな眼差しを向けてきた。
  だが、アドゥソは決然として娘から離れ、先行する師のあとを追いかけた。それでも、何度か後ろを振り返って、娘の姿を眺めるのだった。

  一連の出来事は遠い過去の記憶だった。その日から何十年も過ぎた頃、老衰による死期を目前にしたアドゥソの回想の言葉とともに、荒野を旅する子弟の姿を遠景に映し出しながら、映像は終わる。

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